こんにちは、つかさです。
先日、中国が自然科学系論文の数でトップになり、日本は近年発展途上国に抜かされて10位に下がったというニュースがありました。
詳しいことはこちらのネット記事をご覧ください。
自然科学系論文数、注目度高い「上位10%」中国トップに。日本は?(Yahooニュース)
僕も昔、大学院で研究者をしていたので、このニュースを見たときに、
「やっぱりか」
( ゚Д゚)
と思いました。
末端の研究員(や、それなりの研究成果は挙げてましたよ?笑)の僕でさえ、「そりゃそうだ」という気持ちになりました。
今回は、日本の研究がこのままではどんどん廃れていくということを僕の経験を踏まえてまとめていこうと思います。
僕の研究室と科研費
先ほども述べましたが、僕は大学を卒業後、修士課程に進み、2年間(学部を含めたら約3年間)研究者をやっていました。
「錯体化学」といって、有機物と無機物の間に関する分野とでも言っておきましょうか。
研究室は小さく、機械も十分にそろっている環境ではありませんでしたが、単結晶X線構造解析がすぐにできる環境だったので、成果を出していくことができました。
僕の研究内容というのは、直接現代社会の問題を解決するようなものではありませんでした。
不思議な科学現象を解明していくということを中心に研究していました。
つまり、言い方が悪いですが、「この研究が何の役に立つの?」と言われやすい分野です。
さて、話は変わり、「科学研究費」(通称:科研費)というものがあります。
この科研費は申請して、研究に将来性があるものと判断された場合受け取れるのです。
大きい研究室や大学は大きな金額を受け取れるものを申請しますが、僕の研究室では年間100万円程度の科研費を申請していました。
理由は、先ほども少し話しましたが、僕たちの研究室では「社会の何の役に立つの?」という研究が中心だったので、大きな金額の科研費を申請しても通らないからです。
逆に言えば、有名な旧帝大や私学では国から非常に期待されているために、多額の科研費に方を申請しなければいけません。
科研費の申請には相応の研究結果が必要となります。
学会での発表も必要です。
これが「プレッシャー」になっていきます。
研究結果が出なければ焦ります。
しかし、国は「研究結果や成果をしっかり出したところにたくさんお金あげるよ」という圧力をかけてきます。
さらに、「こんなにお金あげたんだから、もちろん成果出てるよね?」と言ってきます。
僕が「やっぱりか( ゚Д゚)」と思った理由
科研費について何となく理解してもらえたと思います。
僕が冒頭で話をした、「やっぱりか( ゚Д゚)」と思った理由について話そうと思います。
研究って、圧力やプレッシャーと相性が悪すぎるのです。
「これじゃあ博士課程まで人が進学しないよね」と思います。
そして、博士課程に人が行かないということは、それだけ日本の研究が進展しないということです。
研究と圧力
もちろん、社会人になれば結果が全てだと思います。
どれだけ努力しても契約が取れなければ、評価はされません。
しかし、研究に限っては何にも縛られず、ただ純粋に向き合える人が最終的に勝てると思うんです。
「こんな不思議があるのか!実験で明らかにしたい!」
「こんな仕組みがあればもっといい世の中になる!それを見つけ出したい!」
「この反応だけ例外だ…なぜだ…実験しよう!」
「なんでだろう」、「不思議だな」と思うことから研究は始まります。
それを実験によって明らかにすることが研究者の生きがいです。
「早く研究結果を出せ!」「その実験に何の意味があるんだ!」「そんなことより、もっと社会のためになる実験をするんだ!」と国から圧力をかけられたら、研究なんてなにもおもしろくなくなりますよね。
つまり、日本の大学って
「周りの人たちが大学院(修士課程)に進学するからとりあえず進学したけど、研究ってつまらないからもういいや」
となるような環境に成り下がっています。
これじゃあ博士課程に進学する人が少なくなるわけです。
ちなみに、小さな研究者を生み出すための記事を過去にまとめていますので、興味があればこちらをご覧ください。
【夏休みの自由研究どうしよう】自由研究のテーマを考えるときに意識してほしいこと
博士課程まで進学しても、将来約束されていない
ストレートで博士課程まで進学すれば、卒業するのは27歳。
しかし、博士課程では1年ほど海外で研究員として留学する場合もあるので、中には30歳手前で博士課程を卒業する人もいます。
たとえば、次の経歴があった場合、あなたならどちらを採用しますか?
① ○○大学 修士課程卒業(24歳)
② ○○大学 博士課程卒業(28歳)
僕なら①の人を採用します。
研究内容が直接企業にかかわり、研究員として働いてくれるなら②の人の方が優秀かもしれませんが、多くの企業は「研究員」ではない人を雇います。
24歳の人にガンガン仕事を教えていけば、4年後には1人立ちできます。
企業にとっても、その人が長く働いてくれた方が安心です。
博士課程まで進学して、就職先がなかった人って意外といるらしいです。
大学で教授を目指そうとしても、大学の先生の人数制限があったり、研究者としてポストドクター(通称:ポスドク)になるしか道がなかったりする人もいます。
ポスドクなんて、研究者のフリーターみたいなもので、良いように扱われるだけです。
(ごめんなさい、僕の知り合いのポスドクの人が言っていたので、みんなそうだとは限りません)
いつまで学費を払えばいいの?
国公立の大学の博士課程でさえ、3年間通学するには莫大な費用が掛かります。
私学の大学はさらに学費がかかるでしょう。
しかし、研究者になってしまえば、バイトする時間もなかなか確保できません。
中には企業と提携して、博士課程の人にはある程度の援助資金が出るところもあるみたいです。
しかし、「給料」というほどのものでもない場合もあるので、結局足りません。
多くの学生はは平日の夜まで研究室にいることが多いです。
その状況の中でバイトするのは大変です。
つまり、学費が稼げません。
学費以外のところにもお金はかかります。
1人暮らしをしていれば、その生活費もどうするのか…
親が面倒を見てくれるならいいのですが、僕が子どもなら27歳になって親に仕送りをもらうのが申し訳ないと思います。
学費も、親に面倒を見てもらうわけにもいきません。
それなら、早く就職して親孝行をした方がいいです。
奨学金を借りれば、何とかなるかもしれませんが、勘違いしてはいけません。
奨学金=借金です。
奨学金を学部のころから借りていれば、9年間借りることになり、その費用はとんでもない数字になります。
お金がかかるのに、お金を稼げない。
この状況でもやっていける人しか、博士課程には進学できないでしょう。
周囲の視線と環境の変化
博士課程に進学する人はごくわずかです。
世の中の大半の人は22歳で大学を卒業し、就職し、給料やボーナスをもらいます。
そして、20歳半ばや後半になれば結婚の話も出てきます。
それなのに、博士課程に進学した人は給料もなく、まだ学生という身分なので結婚もなかなかできない。
周りとのギャップが激しすぎるのです。
周りは社会人になり、旅行や休暇を楽しんでいるのに、自分は夜遅くまで研究生活で、休日はバイトするという環境を好んで選ぶ人はなかなかいないと思います。
修士課程の2年間であれば、充実すると思います。
しかし、博士課程の3年間は人生にとって大きすぎる3年間です。
その3年間を研究にそそげるかどうか、進学するだけの価値があるのか。
それを考えたとき、博士課程に進学したいと思える人はあまりいないでしょう。
まとめ
日本人が博士課程まで進学しない理由についてまとめます。
・ 圧力やプレッシャーが大きく、研究がおもしろくないから
・ 博士課程に進学しても、将来約束されているわけではないから
・ お金がかかりすぎるから
・ 周囲は「ボーナスだ!」「結婚だ!」と言い始め、「まだ学生なの?」と思われるから
以上の理由から、博士課程に進学する学生がどんどん少なくなっていっていると思います。
その結果、今後数十年経過すると、日本から目新しい研究結果や、ノーベル賞などを受賞しなくなると思います。
現在、毎年日本人がノーベル賞を獲得できるのは、過去の遺産に過ぎません。
今の80歳前後の人たちが研究者の頃、国は多くの大学にたくさんのお金をかけて研究を「サポート」していました。
しかし、近年は先ほど述べたように、国は研究を「強要」や「圧力」によって支配しようとしています。
そのような環境で「良い研究」ができるとは思えません。
この環境を打破するために、文科省は人気回復を狙うために、博士課程の学生の就職を支援するために、インターン設立という対策をとるみたいです。
博士課程の学生のインターン創設へ…就職後押し、人気回復狙う(Yahooニュース)
さて、今後の研究者が伸び伸びと研究できるような環境になるまで、あと何年かかるか。
本質を見据えた改善をいつ行うのか、様子を見ていこうと思います。
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